第42回  栃木県の宝 (2004年12月20日)
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 私は日ごろから、栃木県には自慢できる2つの宝があると思っている。ひとつはオーケストラの栃木県交響楽団。もうひとつは、もちろん我らが栃木SC(サポーターたちは試合開始前に「栃木県民の歌」を歌うことで、このことをすでに主張している)。
今季最終戦で大声援をくれた大勢の観客に感謝のあいさつをする栃木SCイレブン
(12月5日・栃木県グリーンスタジアムで)
 栃木県交響楽団は1970年に設立されたアマチュアオーケストラ。宇都宮で育った私は、中学生のころ、誕生したばかりの栃響を聴いた記憶がある。そのころはまだ、子供の耳にも、どこか不完全な演奏だった。しばらく離れていた故郷に戻り、再び栃響のコンサートを聴くようになって、その充実ぶりに驚かされた。弦楽器群が飛躍的に良くなった。ミスが気になっていた管楽器群も、いつしか安定感を増してきた。この10年くらいは堂々の演奏を続けている。何と東京のサントリーホールで3回も公演した。サッカーに例えれば、栃木SCが国立競技場で公式試合をするようなものだ。自分たちのコンサートのほかにも、地域の市民オペラや音楽団体への協力など、目立たないところでも貢献している。12月26日に宇都宮市文化会館で第78回定期演奏会があるので、興味を持たれた方はぜひ足を運んでいただきたい。
 栃木SCは、JFLの中堅チームとして全国リーグを戦っていることだけでも、地元でもっと注目されていい。間違いなく、栃木県スポーツ界の頂点にある。J1王者の横浜マリノスを天皇杯5回戦で撃破したザスパ草津とは、五分の戦いをした。そして今季、反則ポイントが最も少ないチームに与えられるフェアプレー賞を初受賞した。「勝ち負けと質は違うが、スポーツマンにとって最高の名誉」と、山野井代表も現場を高く評価した。名称に企業名を冠するチームが多い中、純粋な市民クラブとして活動している栃木SC。財政面ではかなり苦しいようだが、懸命にプレーする選手たちに悲壮感はない。むしろ、サッカーができる喜びを発信している。その笑顔は、地域の子供たちへのこの上ないプレゼントだ。今季はホーム入場者数も過去最高となり、ザスパ効果があったとは言え、明るい兆しだった。
 この2つの団体が、もっと地域の人たちに認知され、そのことによって一層飛躍し、さらに相乗効果を生んで、地域の活性化と自らのレベルアップにつながったらいいと思う。当然、「プロ化」を視野に入れた論議が沸き起こるだろう。どちらの団体も、紆余曲折はあっても、もう一歩を踏み出すことで、真に輝く「郷土の宝」となっていくはずだ。推進役となり得る人材は少なくないと思う。

 ☆ 篠崎豊プロフィール
1956年、宇都宮市生まれ。記者歴27年。Jリーグ、JFLなどサッカー取材多数。読売クラブ時代からのヴェルディ・ファン。2004、05年に栃木SC写真展を開催。栃木よみうり前編集長。
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