第8節・愛媛FC戦は1−1の引き分けだった。後半20分、高秀のJFL2得点目となるゴールで先制。場内に「ただいまの得点は…」と心地よいアナウンスが流れている、まさにその時に、愛媛の同点ゴールを食らってしまった。宝くじの1等が当たった!と思ってよく見たら組違いだった、というような、うれしいような残念なような結果となった。冷静に考えれば、Jリーグ昇格を目指す強豪・愛媛に、1300人以上の地元ファンが後押ししたホームといえども、そう簡単には勝てないだろう。勝ち点1を取ったことを良しとしなければならない。
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GK原は秘かに相手ゴールを狙っている!? |
(5月8日・足利市総合運動公園陸上競技場) |
この試合も含め、最近の特筆すべき点は「5試合連続で、相手に先制点を許していない」ということだ。開幕から3戦続けて相手に先制され、今季の最初の課題となったが、それを克服した形だ。以来、1試合も負けがない。見えにくい部分だけれども、評価すべきことだと思う。
その立役者は誰か。一人挙げるのは難しい。GK原? その名を挙げたなら、おそらく原自身が「それは違いますよ」と否定するだろう。高野が復帰し、この5試合で固定された横山、遠藤との3バック。ボランチ堀田。両アウトサイドの石川裕之と伊奈川もいい。横山は「前の方でしっかり守備してくれるから」と全員の守備意識の高さを指摘している。
でも、あえてGK原にご登場願おう。原は第2節・群馬戦から連続先発。第8節では4試合ぶりに失点して悔しがった。「4失点した群馬戦は、自分でもまだ動きが良くなかったと思います。乗ってきたのは第5節・YKK戦からでしょうか。そのペースを維持できて、次の佐川急便東京戦でもいいイメージでプレーできました。佐川急便大阪戦はみんな目一杯だったですけど。ゴールマウスを守るのはDFとの連係です。前のDF陣が頑張ってくれているので…。コミュニケーションは問題ないと思いますよ。厳しい場面は結構ありますけどね。自分が何もしないでいいような、ゴールキーパーが楽な展開が、一番いいんですけど、ね」
GKというのは不思議なポジションだ。五輪でブラジルに勝利した“アトランタの奇跡”で、日本のGK川口が脚光を浴びたのは、言い方を換えれば「やられっ放しだった」ということ(徹底して守る作戦だったそうだが)。GKの大活躍は、チームの劣勢を意味するのだ。
このオフに栃木よみうりが実施した全選手アンケートで、原は今季の抱負を「1ゴール1アシスト」と答えた。冗談半分だと思っていたが、「GKとしては、ヒーローにならない方がいいんですよ」ということを逆説的に伝えたかったのだとしたら、彼は相当シャレの分かる若者だ。
☆ 篠崎豊プロフィール 1956年、宇都宮市生まれ。記者歴27年。Jリーグ、JFLなどサッカー取材多数。読売クラブ時代からのヴェルディ・ファン。2004、05年に栃木SC写真展を開催。栃木よみうり前編集長。
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