第15回  佐野が輝き出した (2004年6月22日)
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 デンソー戦で2点目を決めたFW佐野。この笑顔を毎試合見せてくれ!
(6月20日・栃木県グリーンスタジアム)
 ザスパ草津戦の後半、開幕戦以来11試合ぶりに出場し今季初得点したFW佐野は、次のアローズ北陸戦でも79分間プレーして2得点。アウェーでの2−0の快勝に貢献した。そして第14節、ホームでのデンソー戦。3トップの右で先発した佐野は、左の茅島と時々チェンジしながら相手ゴールに挑んだ。9分、右サイドのFKを堀田がファーにいた高野に合わせ、折り返しを佐野がシュートし先制。22分には、只木が右サイド深い位置からクロスを入れ、再び佐野がDFと競り合いながらダイレクトで決めた。その後、只木のPKを含む2得点で4−0と圧勝したが、試合のすう勢は佐野の2点でほぼ決まっていた。
 タイムアップの瞬間、佐野の今季初のフル出場をたたえて拍手したファンは少なくなかっただろう。炎天下のピッチで、90分間のプレーをやり遂げたことは、佐野にとって大きな意味があった。
 復帰3試合で5ゴール。驚異的なペースだ。いよいよ佐野が輝き出した。しかし、本人は決して浮かれてはいない。ケガとの戦いの苦悩が心に深く刻まれているからだ。
 佐野は第1回JFLから参戦している。国士舘大3年の時だった。2シーズンで14ゴールを記録した。2001年に栃木SCに入団。この年、早くも挫折を味わう。開幕3戦目で右ひざ十字じん帯を切る重傷を負い、一年を棒に振った。「大学でのプレーがキレていたのに…」。悔しくて、つらいリハビリの日々を過ごした。翌2002年は16試合2得点、2003年は21試合5得点。ストライカーとしては、まだ満足できる結果ではなかった。そして迎えた今シーズン。開幕戦に先発したものの、左太もも前部に痛みを覚え、ボールを蹴ることさえできなかった。肉離れに似た症状。またリハビリだ。自らの戦線離脱と若手の活躍。試合をスタンドから見ていて焦燥感がつのった。ここで支えになったのが、3年前のリハビリ経験。「あの時に耐えたことで、強い気持ちが持てるようになったんです」。
 高橋監督も言う。「佐野は本当に我慢して、ウチのエースとして、いい状態で復帰してくれた。レギュラーの座を取り戻そうという気合と意気込みはスゴイよ」。
 チームが上位を狙う勢いの中、自分が必要とされていることを強く感じる。「今回も、耐えてリハビリしてきた結果、ピッチに立てている。一試合一試合を大切にしていきたいですね。体はすごく動くし、ボールが来る位置に入れる。周りがいいボールを出してくれるし。ここからだ、という気持ちで後期に向かって行きますよ。(でも、きょうの90分間はキツかったぁ…)」
 JFL通算26ゴールは、もちろんチーム1だ。スピードとうまさを兼ね備え、いよいよ脂が乗ってきた25歳に、ファンはもっと期待していい。

 ☆ 篠崎豊プロフィール
1956年、宇都宮市生まれ。記者歴27年。Jリーグ、JFLなどサッカー取材多数。読売クラブ時代からのヴェルディ・ファン。2004、05年に栃木SC写真展を開催。栃木よみうり前編集長。
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