第16回  国士舘大戦で見せた強さ (2004年7月1日)
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 前期最終戦があった6月26日は梅雨空の予報だったが、テレビの気象予報士は「一部で晴れ間も出るでしょう」と言った。そのとおり、東京都北区の西が丘サッカー場は試合開始が近付くにつれて雲が切れ出し、キックオフのころには快晴になった。気温は32度。国士舘の大学生を相手に、社会人の栃木SCの方が不利だと感じた。練習量では大学生にかなわない(大所帯の国士舘は練習ローテーションが大変だそうだが)。体力的にも学生の方が上だろう。しかし、栃木SCの選手たちの運動量は相変わらず豊富だった。「学生に負けない体力」と言葉では簡単だが、それを維持するための見えない所での努力がなければ出来ないプレーだ。
 国士舘大の後輩たちを相手に貫禄を見せたMF伊奈川
(6月26日・東京西が丘サッカー場で)
 これは見る目の問題かもしれないが、母校を相手に、右サイドの伊奈川とFWの佐野がヤル気満々。その気迫はすごかった。伊奈川は最初からゴールを狙っていたに違いない。4本ものシュートを放ち、35分には試合展開を有利にする先制点を決めた。左サイドの攻撃から、石川裕之が佐野に回し、佐野がゴールほぼ正面にいた伊奈川にパス。伊奈川は一瞬、若林か茅島を見るそぶりを見せながら、右足を豪快に振り抜いてゴール左隅に突き刺した。栃木の3トップに気を取られて下がった国士舘大DF陣は、意表を突かれた感じだった。
 後半早々に国士舘大の清水に強烈なシュートを決められ同点となったが、学生たちの足は徐々に重くなってきた。栃木のペース。それをさらに引き寄せるために高橋監督が取った策は、スピードでかく乱する作戦。12試合ぶり出場で奮闘した左MF岸田に代えて吉見を投入。茅島を左に下げ、吉見は前線に使った。「スピードとパンチ力がある」(高橋監督)という吉見は、思い切ったプレーで何度も勝負を仕掛けた。さらに高秀を入れて、相手DF陣が疲労と混乱を極めたころ、5試合ぶり復帰の大型FW松永の登場となった。堀田のFKを松永が頭で決めて2−1。さらに89分には、キープかと思われたマイボールを右サイドから石川裕が松永に通し、松永がうまく相手DFをすり抜けてゴール前の吉見にパス。吉見がJFL初ゴールを決めた。
 3得点とも堂々のゴールだった。「後ろに動いて、マークのDFを離してからボールに行った」(松永)という2点目は、確かにゴール前なのにフリーでシュートしていた。頭脳的というか、これぞFWの動きという得点だ。3点目は、のちのちの得失点差を考えると、重要な追加点だ。
 たまたま勝ったのではなく、相手をスピードと運動量とテクニックで突き放した勝利。強いチームの勝ち方だ。これで3連勝。中位グループが接戦の中、着実に勝ち点3を加えて前期を締めくくった。

 ☆ 篠崎豊プロフィール
1956年、宇都宮市生まれ。記者歴27年。Jリーグ、JFLなどサッカー取材多数。読売クラブ時代からのヴェルディ・ファン。2004、05年に栃木SC写真展を開催。栃木よみうり前編集長。
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