第18回  松永に、もっとボールを (2004年7月7日)
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 後期第1節・SC鳥取戦は2−0の快勝。59分の只木(PK)と86分の松永の得点だった。台風7号の影響か、35度という猛暑の島根県松江市での一戦。松永は若林に代わって68分、ピッチに入った。松永自身に得点シーンを振り返ってもらった。右サイドからの攻撃。只木のパスから高秀がドリブルでペナルティエリア内に突進し、相手DF2人をかわしてゴール前に入れたところを右足で合わせた。「(松永は)ゴール前でのポジショニングが良かった」と只木主将。
 4試合欠場の原因となった左足首の痛みは回復したという松永。復帰2試合連続ゴール(今季5得点)で調子は戻ったように見えるが、本人はイマイチ浮かない顔だ。後半の交代出場で「相手が疲れているし、負けている状況でもないし。フル出場している訳ではないので、いいとか悪いとか、分からないんですよね」。エースとしては当然の自己評価なのだろう。
 ゴール前の松永にボールを集めることが
 得点増につながる
(6月26日・東京西が丘サッカー場で)
 前節の国士舘大戦終了後、決勝ゴールのシーンを「力強かったね」と言うと、松永は、相手マーカーをフェイントで振り切ってからフリーでヘディングした動きを強調した。いつものことながら、私たち素人は、松永のような大型FWの得点を高さや強さによるものと単純化してとらえてしまう。成功の裏には、もっと複雑な読みや駆け引きがあり、それは本来、テクニックやセンスと言うべきものなのだ。
 そんな松永だが、自他共に認める悪いクセがある。簡単なシュートを外すことだ。「それ、小学生のころから言われているんです。GKと一対一とか、絶対に入れなきゃいけない時って意外に難しい。ボレーとか体勢を崩した方が、ボク的には良かったりするんです。克服すべき課題ですけどね」。最近では、前期の愛媛戦(足利)で決定的なのがあった。
 JFLの中では、GKを除けば唯一の190cm台。Jリーグの広島や福岡にも在籍し、海外での経験もあるFWはそうざらにはいない。「点に絡めるプレーが目標。おとりでもいいし、スルーしてもいい。自分が動いてできたスペースからチャンスが生まれたり…。前からのディフェンスも大きな役割です。まずは、チームとして必要と思われるプレーができれば。記録には残らないけど、それが重要なことなんです」。自らは決して「高さ」「強さ」を口にしない。本人にとっては当たり前の武器だからだ。
 おそらく、松永の存在感を私たちファンはまだ理解していない。松永自身も、その気持ちを思うようには実践できていない。なかんずく、ゴール数だけがFWの評価基準でないことは、たいていのサッカーファンなら知っている。それでも、試合の時には叫びたい。「松永に、もっとボールを集めろ!」と。そして、松永には「もっとゴールを!」と。

 ☆ 篠崎豊プロフィール
1956年、宇都宮市生まれ。記者歴27年。Jリーグ、JFLなどサッカー取材多数。読売クラブ時代からのヴェルディ・ファン。2004、05年に栃木SC写真展を開催。栃木よみうり前編集長。
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