第20回  もどかしい試合 (2004年7月21日)
第19回<< >>第21回

 ケガから復帰した岸田にキレが戻ってきた
(7月17日・栃木県グリーンスタジアムで)
 後期第3節の佐川急便大阪戦は0−1の敗戦だった。前半11分、右サイドのスローインから正面にうまくつながれて、佐川大阪の1トップ・秦(はだ)に決められた。結局、この1点で決着したが、栃木SCはホームチームらしく攻め続け、公式シュート数は12対5、CKは10対2と相手を大きく上回った。決定的場面も栃木の方が多かった。1点で負けたことが本当に惜しいと思わせる試合内容だった。このような、ホームのファンにとってもどかしい試合は、サッカーの世界では時々あることだ。次に引きずらないように、選手もファンも、気持ちを切り替えるしかない。
 ゲームそのものは、両チームともキックオフ直後から得点意欲が高かった。栃木は若林、石川大、茅島の3トップが躍動的だった。とりわけトップ下の只木が見せた貪欲なまでのゴール意識には目を見張るものがあった。後ろからの大きなパスをDFにチャージされながらボレーでシュートしたシーン。左サイド深く、相手DF2人が立ちはだかる"狭き門"を、ボールを浮かせて突破し、ゴール前の若林にピタリと合わせたクロス。実を結んでほしいと祈らずにはいられないプレーだった。
 背後からのロングボールをボレーシュートする只木
(7月17日・栃木県グリーンスタジアムで)

 首尾よく先制した佐川大阪は、後半は無理せずに、守り切るつもりだったようだ。栃木が松永、石川裕之、高秀を投入し、より攻撃的になったことに対応した。いつもは足が鈍ってくる相手守備陣だが、この日の佐川大阪は最後まで粘っこいマークと選手同士のフォローアップが効果的だったし、GKのポジショニングはほぼ完ぺきだった。
 痛い連敗。8試合ぶりの無得点。高橋監督は「チャンスはあった。1本決めていれば、流れはウチのものになったはず。サイドから切り崩していたのだが…。最後、ちょっとしたズレなんですよ」と、歯ぎしり状態だった。
 混戦から一歩でも抜け出したいところで足踏みしてしまったが、そんな中でも光明はいくつかあった。先発出場した左MF岸田茂樹。「相手の9番(秦)を警戒して、前半は守備を意識しましたが、後半はどんどん前に行くようにしました」。その言葉通り、後半4分には強烈なミドルシュートを放った。反撃ののろしになってほしかった一撃だった。76分に高秀と交代したが、負傷も癒えて、本来の動きが戻りつつあった。「ボールを持ち過ぎ」との指摘もあるが、そのダイナミックなドリブルは、ファンに何かを訴えかけてくる。「パスやシュートの精度をもっと上げたいですね」という岸田が、栃木の勝利に貢献する日は必ず来るはずだ。

 ☆ 篠崎豊プロフィール
1956年、宇都宮市生まれ。記者歴27年。Jリーグ、JFLなどサッカー取材多数。読売クラブ時代からのヴェルディ・ファン。2004、05年に栃木SC写真展を開催。栃木よみうり前編集長。
第19回<<>>第21回

 
Copyright © since 2005 TOCHIGI SOCCER CLUB.
caters