第22回  何が敗因だったのか (2004年8月6日)
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 3失点すべてが、相手左サイドからのクロスボールをヘディングシュートされたものだった。1点を追うホンダが後半、点を取りに来ることは必然だった。後半開始早々、ホンダは左から入れたボールをMF鈴木がヘディングし、ゴール右隅を襲ったが、栃木GK原が横っ飛びで弾いた。スーパーセーブだったが、これはホンダ逆転ドラマの予告編だった。その後もホンダは、素早いロングパスを左サイドに供給し続けた。
 同じ形で3失点するのは屈辱だ。堅守を誇っていた栃木DF陣がこれほどのほころびを見せるとは、誰が予想しただろう。見たくない現実だった。DF3人の身長が、DFとしては高くない(173、175、176cm)ことも一因かもしれないが、ヘディングシュートは高さだけで決まるのではない。スタンドの高い位置から見ていた観客には、その原因がよく見えたのではないだろうか。
 「栃木の攻略法」をさらけ出してしまった感じはするが、J1に飛び級移籍した古橋の穴を埋めようと必死だったホンダFW新田のファイトあふれるプレーは、敵ながらあっぱれだった。
 高橋監督は試合後、憔悴し切っていた。「ホンダが復活するか、ウチが復活するか、大事な試合だった。何が何でも勝ちたかった。相手が勝負に出てきたのは分かっていたが、中で競り勝てなかった。でも、勝つか負けるか、勝負の世界。こんなことで落ち込んでいたら仕方がない。ズルズル行くわけにはいかない」。強気の言葉とは裏腹に、声はうつろだった。
失点の原因を象徴するシーン。左からのクロスボールにホンダの2選手が合わせているが、栃木の2選手は競り合っていない。
(7月31日・栃木県グリーンスタジアムで)
 栃木は1−0からも、もちろん2点目を狙ってはいた。しかしチャンスを逃し続けたことで、自らホンダに加勢してしまった。MF堀田が言った。「2−0にしてしまえば、相手はあそこまで勝ちには来ない。キレイに決める必要なんか全然ないんです。泥臭くていいから、もう1点が何としてもほしかった。後半、しのげるという気持ちがあったことはあったでしょうね。そういう気持ちになったら負けです。同じJFLのチーム。個々の能力にそれほど差はないんです。ここまで来たら気持ちの問題。チャレンジを忘れたらダメです。今日の場合は、もう1点取るという強い気持ちが……足りなかった」
 選手たちのパフォーマンスが落ちているとは思えない。それなのに、4連勝のころのリズムが感じられない。得点チャンスを生かせないことが一番の原因だが、堀田の言うように、気持ちの問題がそれ以上に大きいのかもしれない。
 「オレたちは強い」という慢心はなかったか。「今のホンダには勝てる」という思い上がりはなかったか。気がつけば、昨シーズン同時期と、勝ち点は変わらない所で足踏み状態だ。

 ☆ 篠崎豊プロフィール
1956年、宇都宮市生まれ。記者歴27年。Jリーグ、JFLなどサッカー取材多数。読売クラブ時代からのヴェルディ・ファン。2004、05年に栃木SC写真展を開催。栃木よみうり前編集長。
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