第29回  J2の領域に進出 (2004年9月29日)
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 天皇杯が始まった。今年から開幕が2か月も早まった。これは、寒い時期に開催困難だった地域でもっと多く試合をやろうという日本サッカー協会のアイデアだ。いいサッカーをもっと全国の人に見てほしいという熱意が底流にある。おまけに、J1が登場する4回戦の会場を、3回戦の勝利チームが選択できることになった。これまでは、どこか遠くの土地で、そこに全く関係のないチーム同士が戦うという間の抜けた組み合わせがあったことを考えると、これは大改革だ。J1チームの試合を地域で開催することのメリットも大きい。
 もし栃木SCが3回戦でサガン鳥栖に勝った場合、J1チームを栃木県グリーンスタジアムに迎えることになるのだ。“JFL県”にとってはうれしいことだ。こんな素敵な方式、誰が考えたのだろう。ヤキトリで一杯ごちそうしたいくらいだ。まさか、川淵三郎キャプテンだったりして…。
 (どさくさまぎれに、一サッカーファンとして、元日の国立競技場で毎年感じる不満を書いておく。表彰式で、NHK杯と共同通信社杯を授与するのはやめていただきたい。日本サッカーの大ピラミッドの頂点に立った栄光のチームにふさわしいのは、ただひとつ、あの天皇杯だけのはずだ。関係者には「天皇杯」の重みを理解していただきたい)
守備意識の高さが天皇杯2回戦を勝利へと導いた
(9月26日・栃木県グリーンスタジアムで)
 天皇杯2回戦のSC鳥取戦は1−0で勝って、J2の領域の3回戦に進出した。一発勝負のトーナメント戦。まずは「勝つ」という目標をクリアした。前週のリーグ戦で連敗を脱出し、これで連勝となって、上昇ムードで次週のザスパ草津戦に臨めることになった(ザスパはもっと勢いづいているけれど)。
 鳥取戦の勝利のポイントは、栃木の守備意識の高さにあった。GK原が目立たないくらい、前の選手たちが集中してプレーしていた。前半40分過ぎの鳥取の波状攻撃では、ゴール枠に飛んできたシュートを種倉が体を張って防いだ。この試合の種倉は、惜しいシュートを2本外したことよりも、この守備一つで評価されていい。後半、まだ0−0の時点で、相手左サイドの選手がドリブルで持ち込もうとしたところを懸命に追って行ってスライディングタックルし、ボールをアウトにしたFW佐野のプレーにも、チームの気持ちがよく表れていた。
 トーナメント戦でより大切なことは、先に失点しないということだ。先制点か無失点かは、ニワトリが先か卵が先かの議論に似ているが、忘れてならないことは「守備から攻撃が始まる」というサッカーの基本だ。

 ☆ 篠崎豊プロフィール
1956年、宇都宮市生まれ。記者歴27年。Jリーグ、JFLなどサッカー取材多数。読売クラブ時代からのヴェルディ・ファン。2004、05年に栃木SC写真展を開催。栃木よみうり前編集長。
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