第32回  2つの誤算 (2004年10月20日)
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 後期第9節のアローズ北陸戦、ホームの栃木SCは1−5の屈辱的大敗を喫した。2001年後期デンソー戦以来の5失点(最多失点は2000年前期ソニー仙台戦の0−7)。大量失点の裏には2つの誤算があった。
アローズ北陸の攻撃姿勢に栃木SCは手こずった。
左15番は横山
(10月17日・栃木県グリーンスタジアムで)
 第1の誤算は、アローズに先制点を許してしまったこと。栃木のゲームプランは、先制点を奪って、さらに、相手が点を取りにくる裏を突くというものだった。立ち上がりは良かった。開始2分、右から佐野が入れて若林がヘディング、惜しくもゴールポストにはじかれた。その1分後には、相手DFを背にキープした只木から左の吉見にパスが回ったが、吉見のシュートは左に外れた。前半やられたのはCKからの1本だけだったのだから、序盤にどちらか1点でも決まっていれば、プラン通りの試合運びができていた可能性が高い。
 第2の誤算は、リードしたアウェーチームのアローズが、後半さらに攻撃的に来たことだ。54分、アローズFW北川のシュートは栃木ゴールを間一髪、斜めにかすめた。栃木DF陣は凍りついただろう。私はスチールカメラマンとして芝生レベルで見ているので、距離感がつかみずらいのだが、スタンドから見ているファンは気付いたと思う。栃木DF陣は下がり気味になり、次第に受け身になっていたのではないだろうか。その2分後、上園にジャンピングボレーを決められ0−2。これでますます試合は難しくなった。
 栃木は後半、「(ボランチの)堀田を高い位置にして、点を取りに行く態勢を作った」(高橋監督)が、「それによって間があいてしまい、そこで北川に勝負されてしまった」(同)。只木が一矢を報いたものの、北川のドリブルに翻弄された栃木守備陣が立ち直ることはなかった。
 アローズの草木監督に試合後、後半を守備的に運ぶ考えはなかったのか聞くと、「なぜ守るの」と語気強く答えた。「栃木の攻撃は、トップに放り込んでくるだけで、単調でしょ。そのセカンドボールを拾って、手数をかけずに攻めるということ。サイドに人数をかけて、高い位置に行ったら勝負しろと(ハーフタイムに)指示しましたよ」。アローズは、J1でトップを独走する浦和レッズのような、攻守の切り換えの早い逆襲サッカーを目指し、プラン以上の結果を出したのだ。
 2つの誤算という見方は、もちろん結果論の域を出ないものだし、勝負の世界は誤算だらけではある。大敗の原因はほかにあったかもしれない。ただ、「たまたま5点も取られちゃった…」というような甘いものではなかった。栃木を含む中位8チーム(5〜12位)がまだ互いに射程圏内にある今が踏ん張りどころなのだが、このような敗戦を目の当たりにすると、残り6試合、とても心配だ。当コラムのタイトル「栃木SCふぁん!」の「ふぁん」が「不安」になってきた。

 ☆ 篠崎豊プロフィール
1956年、宇都宮市生まれ。記者歴27年。Jリーグ、JFLなどサッカー取材多数。読売クラブ時代からのヴェルディ・ファン。2004、05年に栃木SC写真展を開催。栃木よみうり前編集長。
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