第34回  「昨季以上」の危機 (2004年10月27日)
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 気付いた人は少なかったかもしれないが、YKK戦の大敗で3連敗し、残り5試合となった時、栃木SCの今季最大の危機が訪れた。同じ試合数の昨シーズンに得た勝ち点45に届くためには、残り5試合を全勝しなければならない状況に追い込まれたのだ。文字通り「崖っぷち」である。今シーズンの目標は「3位以内」だったが、それは希望的目標であって、現実的目標は「昨季以上」ということ。つまり「勝ち点46以上、順位は7位以上」はクリアしなければならない数字だった。ザスパ草津のような強いチームが参入したにせよ、進化しなければならない栃木県サッカー界の頂点にあっては最低条件でもあった。残り5試合で勝ち点15を積み上げることができるかどうか。一戦一戦がとてつもなく重い意味を持ってくる。
 2週続いた栃木県グリーンスタジアムでのホーム戦。それを大量失点で連敗してしまった。雲ひとつない秋晴れの空の下で、だ。スタジアムに足を運んだファンの失望は小さくなかっただろう。熱心なファンたちの心が離れないことを願うばかりだ。
初のフル出場を果たした高秀
(10月24日・栃木県グリーンスタジアムで)
 ま、悲観論者になっても仕方がないので、YKK戦の闇の中に見えた幾筋かの光のことを……。
 JFL3ゴール目を決めた若林は、はね返りのボールによく反応した。決してカッコいいシュートではなかったが、相手GK中川とDF堀の間のわずかなスキ間によく入り込んだ。このような泥臭い仕事をもっと期待したい。
 大敗の失望の中で目立たなかったが、今季の新人・高秀がついに先発フル出場を果たしたことも強調しておきたい。前半の同点ゴールは、高秀の強烈な右足シュートがゴールポストにはね返ったところに若林が詰めたものだった。半分は高秀のゴールだ。高橋監督は高秀を最後まで交代しなかったことについて「スタミナあるからね。若林(後半68分からは松永)のポストプレーに、スピードある高秀をからませてゴールを狙う作戦だったので」と説明した。攻撃の時には前へ、守備の時には中盤に下がって、よく動いた。願わくば、前半終了間際、只木のスローインから若林が後ろに流したゴール直前のボールにタイミングよく合わせたシーンでは、きっちりシュートしてほしかった。ゲームの流れを引き寄せる最高の仕事ができたはずだった。
 吉見はラスト6、7分だけのプレーだったが、もっと長い時間、ピッチで見てみたいと思わせる、なかなかいいセンスを感じさせる選手だ。

 ☆ 篠崎豊プロフィール
1956年、宇都宮市生まれ。記者歴27年。Jリーグ、JFLなどサッカー取材多数。読売クラブ時代からのヴェルディ・ファン。2004、05年に栃木SC写真展を開催。栃木よみうり前編集長。
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