第39回  「あと一歩」だった (2004年12月8日)
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 7位の可能性もあった最終節は、国士舘大が不祥事による活動自粛のため出場辞退したのに伴い、7位・佐川急便東京が不戦勝(3対0)となって勝ち点3を加え、3日前に7位を確定してしまった。栃木の最後の目標は、8位・群馬FCホリコシをかわしてAクラス入りを果たすという一点に絞られた。
最後まで激闘を展開した群馬FCホリコシとの
2004年最終戦
(12月5日・栃木県グリーンスタジアムで)
 その群馬との一騎討ちとなったホームでの最終戦。佐野が前節に負傷してしまったので、代役・石川大で若林、石川裕之との3トップを形成した。3バックの要の横山は警告累積で出場停止。代わりに、前期の群馬戦で2アシストの松本が右に入った。前半は一進一退だったが、どちらかというと早いパス回しの群馬のリズム。サイド攻撃も群馬に分があった。34分、群馬の奈良に躍動的なフェイントで遠藤が抜かれて、絵に描いたようなシュートを食らってしまった。今季、先制されて、逆転して勝った試合は、最下位のデンソー相手の1試合だけ。先制されたら勝ち目はないのだ。
 それでも、栃木の勝利への意欲は群馬よりはるかに強かった。後半は、選手たちの鬼気迫るような思いがひしひしと伝わってきた。茅島、高秀を投入して、さらに攻勢をかけた。73分、左サイドから茅島がクロスを入れた。初めに競った高秀は、こぼれたボールを若林がキープするや、ゴール左に素早くポジションを取った。若林は相手DFをかわしながらシュート。ゴールマウスのド真ん中、ライン上に立ちはだかった群馬DF小澤に当たったボールが、高秀の所にはね返った。高秀は反応よく左足でジャストミートし、強烈な弾道でネットに突き刺した。
 勝利への貪欲さはますます高まり、スタジアムはどよめき続けた。しかし、引き分けでOKの群馬相手に、惜しくももう1点はならなかった。本当に、「あと一歩」だった。戦い終えて、高橋監督は言った。「総決算の試合で、栃木の全員サッカーの醍醐味をお客さんに伝えることができたのではないでしょうか。こんなに頑張った選手たちです。トレーニングの環境面が整いさえすれば、もっといい結果が出せるはずです」
 9位で今季を終了。Aクラス入りはならなかったが、最後に得た勝ち点1の意味は、とてつもなく大きい。引き分けがなかったことが、後期の不調を象徴していたからだ。強豪相手やアウェーでは「負けない(引き分け)」ことがリーグ戦を戦うポイント。Jリーグを目指した群馬は、成績こそ8位だが、JFLの強豪には違いない。その意味でも、来季につながる勝ち点1だった。

 ☆ 篠崎豊プロフィール
1956年、宇都宮市生まれ。記者歴27年。Jリーグ、JFLなどサッカー取材多数。読売クラブ時代からのヴェルディ・ファン。2004、05年に栃木SC写真展を開催。栃木よみうり前編集長。
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