第4回  高秀の決勝シュート(佐川印刷戦) (2004年4月26日)
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 前回、今季初勝利の要因は守備にあったと強調したが、やはり決勝シュートを決めた高秀賢史選手のことを書いておかなければならない。「勝負を決めたプレー」は、いかなる試合でも、最も賞賛されるべきだからだ。
 新人の高秀は後半19分、FW若林と交代してピッチに入った。これで、開幕以来4戦連続の起用。「高秀のスピードは武器。JFLの雰囲気に慣れて、何かきっかけをつかめば、良い方向に変わる」(高橋監督)という首脳陣の期待の大きさの現れだ。
 高橋監督(右)は新人・高秀を使い続け、4試合目に結果を出した
(4月18日・栃木県グリーンスタジアム)
 初のFW起用となった高秀はガムシャラだった。狙いはたった一つだ。昨シーズンまで活躍したスーパーサブ・黒須を思い出させる活発な動きだった。後半41分、ついにその時が来た。堀田がDFの裏のスペースを狙って山なりのボールを放り込んだ。そのパスが、まず佐川DF葛野を越えた。高秀が猛ダッシュした。DF萩生田をも振り切ってペナルティエリア左に侵入。飛び込んできたDF松岡の足より一瞬早く、左足を振り抜いた。シュートは低い弾道となって相手ゴールに吸い込まれた。次の瞬間、茅島が抱きついてきた。
 高秀を使い続けた高橋監督は試合後、してやったりの表情だった。「これまでの高秀は、パスのコースを探してばかりいましたね。だから、強気で行け、松永に絡んで勝負しろって送り出したんです。相手が疲れた時間帯ですから、スピードが生きました」
 高秀は言った。「開幕戦よりもボールが見えてきました。(このゴールで)ちょっと余裕ができたかな」
 一躍ヒーローになった高秀は、実は悩んでいた。群馬戦後、只木主将に相談したほどだ(当コラム第1回参照)。「2試合やって、全然ダメで、ものすごくへこんでいたんです。動きのこととか、いろいろアドバイスを受けました」。その時、只木主将は「(途中交代出場で初得点の)茅島のように、オマエも途中から出て流れを変えられる選手じゃないか」と励ました。この言葉が、意気消沈寸前の新人を救った。高秀の中で何かが吹っ切れた。
 レッドカードを受けて前半で退場した只木主将は、おそらく誰よりも、このゴールと勝利を喜んだに違いない。「みんなに迷惑をかけてしまって」と、試合後の選手一人一人に抱きついて行った時、その顔は涙でくしゃくしゃだった。
 「高秀はいいものを持っています。経験を積むことで、どんどん良くなりますよ。ゴールの瞬間は本当にうれしかった。自分のことよりもうれしかった。かわいい後輩たちが、こうやって成長して行くんですね。これからは、あいつらがチームをしょって立って行くんですよ」

 ☆ 篠崎豊プロフィール
1956年、宇都宮市生まれ。記者歴27年。Jリーグ、JFLなどサッカー取材多数。読売クラブ時代からのヴェルディ・ファン。2004、05年に栃木SC写真展を開催。栃木よみうり前編集長。
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